07.4

　昨夜は、12時過ぎに目を覚ましてしまい、それからなかなか寝付けなかった。５：００起床。朝食もボリューム満点。しっかりといただく。中年の2人連れは先に出発していかれた。自分も支度を済ませ、お会計をする。宿泊費6,000円。ビールと酒が1,200円だった。
　６：４０出発。今日は最長の40キロ。死んでも歩かなくてはならない。昼食までには25キロは歩きたい。
　浜辺の国道をしばらく行くと、遍路道は、国道から反れ、広い芝生の中の散歩道から、道は海岸沿いの松林の公園へと入り気持ちがいい。あたりにはオートキャンプ場があり、朝食の準備中。ベーコンを焼く匂いがしてくる。なんとも優雅な休日を満喫していらっしゃる。松林の中に点在する駐車場はサーファーの車であふれており、早くも海にはサーファー達が海に点在しており、まるでアザラシの群れのようである。朝の散歩中の人達も多数。こういう道を散歩できるとはうらやましい限りである。この一帯にはサッカー、テニス、スケボーと様々なスポーツ施設が整備されており、広大な運動公園になっている。
　宿で水を確保しようと思ったが、鉄分の匂いがしたので、公園内の休憩施設でペットボトル3本の水を確保できた。こういう気候での歩きは水分補給が欠かせないが、ミネラルウォーターを買っていると馬鹿にならないから、水道の水で充分である。
　公園を抜けると県道に出る。今日は40キロ。ペースを上げる。1時間に6キロのペースで歩きたい。小高い岡を2つ越えたところで中年2人組の姿が見えてきた。意外と早く追いついた。二人を抜き、今度は10キロ地点のコンビニを目指し歩く。9時に到着。ここで、今日の昼食を確保。中年2人組の到着と入れ替わりで出発。道は土手に出る。四万十川である。20数年前、営業で来たときには見ることができなかった。あの頃もすでに名前は全国区だった。河口部だけあって川幅は優に100ｍ以上はありそうである。町の名前も中村市から四万十市に変わっている。市町村合併があったのだろう。
　橋を渡り右岸側を川沿いに歩く。ほどなく川に別れを告げ、道は田園地帯を山に向かっていく。道はだんだん山に向かってなだらかな登りとなる。振り返ると先ほど男性と一緒にいた女性遍路が歩いてくる。意外と足が速い。彼女を待って一緒に歩きたいところだが、今日はそんな余裕はない。ペースを落とすわけにはいかない。傾斜も増してくるが、ひたすら金剛杖をしっかりついてペースを保ち前進。前にトンネルが見えてくる。2キロ近くありそうだ。息を整え、水を補給し、トンネル突入。歩道があるから少しは安心して歩けるが、車の排気ガスで息苦しい。ハンカチを鼻に当てながら歩く。10分かかってトンネル脱出。道は下りとなりレストランのある交差店まで来る。明後日にはまたここまで戻ってきて延光寺へ向かうことになる。レストラン脇の小公園の東屋で休憩することにする。若い男性と女性遍路の先客がいたので、邪魔しないように反対側で一服させてもらう。
　ここは今日の20キロ地点。残り20キロ。時間は１１：００。あと10キロ歩いて昼食にしたい。足も少し回復してきた。さーがんばろう。それから、川沿いの道を歩く。川幅も広くなり、歩く先は、山が開けてきた海も近いはずである。明日宿泊予定の「安宿」があった。昨日ほどではないが、結構古い建物。予約の時に相部屋と言われた。今回はじめてだが、泊まれるだけでも良い。しかし、名前が気になる。
　海岸道路に出ると、道は標高を増していく。海岸は岩場が続いている。そろそろ25キロくらいのはずである。太陽は真上から照りつけ、腕が赤くなりヒリヒリとしてきた。日差しをしのげる休憩場所がないものか探しながら歩く。車道から引っ込んだところに木陰発見。ここで休憩とする。時間は12時30分。昼までで２５キロを歩くことができた。痛い足に耐えながら良く頑張ってきた。オニギリを食べ、初日に買った小夏もいただく。この小夏という果物は、前回の遍路で始めて食べたが、皮の下の白い部分を残して食べるのだが、なんともおいしくビタミン補給にもなり、ヤミツキになってしまった。ゆっくりと足を休める。
　1時間の休憩をとり、13:20出発。それにしても靴を履きなおして歩きを再開すると足を地に着ける度に痛みが走る。なかなかペースが上がらない。10分ほどすると慣れてくるのか、麻痺してくるのか順調に歩けるようになる。海岸道路は下りだすと、小さな集落。そしてまた登り、断崖の海岸道路、そして下って集落の繰り返し。気づくと前に中年2人組。1時間休憩している間に抜かれたようだ。一人はちょうど集落の民宿に消えていった。まだ１４：００。いまから何をするのだろう。要らぬ心配である。2日目に一緒に歩いたもう一人に追いつく。彼の宿はここから7キロくらい。自分の宿はさらにその5キロ先である。彼から励ましていただき、お先に失礼させていただく。
　まもなく、視線の先に長い砂浜が現われる。砂浜の入り口にはテントやらキャンピング車でひしめき合っており、水着姿の若者が往来している。まるでコロニー状態。遍路標識はその中を目指しているが、そのまま車道を行く。遍路地図にある松林の遍路道に行こうと車道を反れ浜のほうに向かって行くと、松林の中を歩けるとばかり思っていたが、砂浜に出てしまった。遍路道は砂浜の道だった。大勢のサーファーで賑わっている。サーファーで賑わう砂浜を遍路が歩いている、なんとも奇妙な光景である。延々と砂浜を歩く。非常に歩きにくい。砂浜も終わり近くなり、標識に従い松林に入る。樹海のなかのようで迷いそうである。やっと国道にもどる。かなり遠回りをしてしまった。この辺は民宿が多い。そのすべては満室で予約できたなった。もう一人の千葉のおじさんの宿を過ぎ、土佐清水への分岐まで来た。ここから一山超えれば土佐清水の町。県道の道を、登っていくとトンネル。トンネルを抜けると、もう5キロもないはずである。時間は15時過ぎ、4時には宿に着ける。道を下っていくと土佐清水の街に入る。道は突き当たりとなり、三叉路になっている。右に行けば繁華街で銀行もありそうだが、とにかく早く宿に着きたいので左へ行くと、土佐清水の漁港。鰹船か、多くの船が停泊しており、土産店もあり、観光客で賑わっている。
　そして、そろそろ宿がありそうな所まで来たが、それらしき看板もない。そのまま進んでいると後ろから来た自転車に乗った女性が励ましの声をかけてくれたので、宿の場所を聞いてみると通過してしまっているらしい。お礼を言い、宿に電話をして場所を確認する。途中から住宅街に入り、道を登れとおっしゃる。言われたとおり行く。看板も何もない。これでは分かるはずがなかった。やっと岡の上の民宿「みかんの家」到着。ご主人が表で待ってくれていた。
　宿は民家風の建物で古くはない。今日はどこからかと聞かれたので、ルートを説明すると40キロを歩いて早かったと褒めていただいた。２階の部屋に通される。部屋は６畳間で清潔。窓からの眺めも良く、気持ちのいい風が入ってくる。腰を下ろししばし呆然。本当に疲れた。早速、1番風呂に入らせてもらう。家族仕様の一人用の湯船だが清潔で気持ちがいい。洗濯も済ませ、部屋に戻り足のマメの治療。マメは4箇所となり、かなり大きくなってきた。前回はほとんどできなかったが、歩く距離が違う。それだけ今回は頑張っているということだ。
　食事の声がかかり、食堂へ。奥さんは体が弱いようでご主人と息子さんがせっせと動いている。あいそのいい息子さんで何かと気遣ってくれる。食事をしていると何本も電話がかかり、予約やら、今日部屋が空いているのかの問い合わせのようで、今日の宿泊者2組追加。良かった良かったと思ってしまった。壁には、ツーリングの人達の写真が何枚も飾ってある。聞くと息子さんが小さい頃からツーリングの人達の定宿らしい。ボリュームのある料理を肴にビール、酒と今日もいけてしまう。家族連れと若い女性遍路も食堂に下りて来た。女性遍路は、38番まで終えており、明日の宿泊は同じ安宿らし。かなり足を痛めており、明日は病院に行くつもりだという。自分も辛かったが、病院に行くほどだからもっと辛いなか歩いてきたのだろう。ひとしきり話をしていたので、お酒を1本追加してしまう。部屋に戻り9時就寝。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（歩行距離：４０．６ｋｍ）