07.3

　今日も5時に起床。やはり6時30分まで、時間が余ってしまう。昨夜同様、朝食も質素。大豆の煮物に笹カマ、梅干、タクアン、味噌汁、以上。朝食も一人だけだった。お会計は柳屋旅館と同じ7,500円。
　身支度をし、７：１０出発。早朝の窪川の街を歩く。結構旅館が多い。宿坊に泊まった人たちだろうか、国道へ向かう何人ものお遍路とすれ違う。5分で37番岩本寺到着。今回初めての札所である。本堂でお参り、ご本尊は不動明王、御真言も唱える。大使堂にもお参りし、納経所へ、男性と女性の坊さま二人。丁寧に書いていただく。隣にある宿坊からは、お遍路さんが次々と出発していく。売店で絵葉書を買い、タバコを一服して、７：４５出発。
　国道へ出て、道は少しずつ上りになる。しかし、平地同様のペースで歩くことが出来る。先のほうにお遍路の姿。彼を目標にペースを上げる。岡を越えると、道はゆるやかにな下りとなり、国道から遍路道に入る。今日は、昨日のような峠越えはないはずであるが、国道ばかりでなく、こういうほうがアクセントがあっていい。道は山の中に入り、急な下り坂となる。さきほど会った逆打ちの人はここを登ってきて、さぞきつかっただろう。更に国道のトンネルの上を横断し、また森の中に入る。見ると先には二人連れのお遍路さんが、急な下りを足元に気をつけながらゆっくりと下っていく。すぐに追いつく。夫婦二人連れのようである。ご主人らしい男性は、奥さんを気遣いながら彼女に歩調を合わせながら歩いている。ペースは上がらないだろうが、二人で歩く夫婦の姿もいいものである。自分のところと言えば、クモや虫の嫌いなうちの奥さんは、国道を歩くと主張し、こういう遍路道を歩きたい自分とは意見が対立するに違いなく、喧嘩しながらの道中となるか、一緒に歩くということはなさそうである。
　考えてみると、今かなりの急峻な道を延々と下っている。思えば、昨日七子峠まで急激な登りであった。ということは、岩本寺のある窪川という町は、高原地帯であったということになり、昨日登った分を今下っているということになる。道理で、今朝肌寒かったはずである。
　やっと山道の下りが終わり、国道に出てみると遍路道を避けて国道を下ってくるお遍路の姿が後ろのほうに見える。膝の悪い人はそのほうが賢明と思われる。長い下り道だった。それから、延々と国道を行く。休憩を挟むため、何人かのお遍路と抜きつ抜かれつ歩く。国道から、遍路道に入ると古めかしいレンガ造りのトンネルがある。熊井隧道とある。歴史のあるものかもしれない。それから国道へ出た先の、コンビニで弁当を調達。入り口で二人連れのお遍路がベンチでオニギリを食べているが、自分はもう少し先の海の見える景色のいいところで食べることにしているので、ザックにしまいこんで先を急ぐ。それから佐賀の町を抜けると海が見え、海岸沿いの道になる。天気も良く、海の青もきれいで、気持ちいい歩きとなる。ほどなく海岸に作られた公園が見えてくる。かなり広い公園で、その中にある東屋で昼食とする。足はかなり痛い。靴を脱ぐと開放され、血がどっと廻るようで何と気持ちがいいことか。
　今日も30キロの道のり、ゆっくりしていられない。足も大分回復したので出発。それからも公園が続く。かなり広大な公園で、いい景観を作っている。それからも延々と海岸道路が続く。ひっきりなしに他県ナンバーのドライブの車が西の方向に走り抜けていく。バイクのツーリングも多い。さすがゴールデンウィークである。
　すると、1台のバイクが私を抜き去って行ったかと思うと少し引き返して止まり、バイクから降りてきた男性が、反対車線へ行き、カメラを構え海を撮っているのかと思ったら、私を映している。アマチュアカメラマンだろう。映されていると分かると妙に意識してしまう。そこで、彼に私のカメラで遍路姿を映してもらうと、彼はまた新たな被写体を求め去っていった。
　それから、5キロごとに休憩をとりながら歩く、今日は晴天でかなり暑い。腕も日に焼けて痛くなってきた。そして南に向かっていた道が西に向きにカーブし、岬のトンネルを抜けると遥かかなたに足摺岬の山影が見えてきた。あの先端までは55キロ、これか歩いていくのかと思うと気が遠くなりそうである。
　そして、途中にあったお堂兼休憩所に立ち寄ってみると、青年が一人。土間の右側にはお参りをするところ、左側は小さな部屋に布団が何組かたたんである。彼は、今日ここに泊まるのだという。ここの家主は修行僧で、行に行っており何日も帰っていないらしい。ここには炊事道具茶碗類が揃えてあり、家主の修行僧はここで生活しており、お遍路の宿泊所も兼ねているのだという。家主のいない間も500円を払って自由に炊事道具なども使えて泊ることができるのだという。こういう野宿をしながら歩く遍路にとっては貴重な場となっているようだ。
　そこから程なく、海岸は砂浜へと変わり、海には多数のサーファー。道は砂浜に面した気持ちのいい道になる。西日を正面に受けながら歩く。もうすぐ宿,民宿水鏡荘に着くはずであるがそれらしき建物も看板もない。ちょうどタコ焼屋さんがあったので聞いてみると、隣だと教えてくれる。行ってみると古びたトタン張りの建物。なるほど壁には消えかけた水鏡荘の文字が見える。敷地に入っていくと野良着のような服を着た夫婦の姿。自分の姿を見つけると旦那さんは建物の中に消えていった。建物の脇にはＲＶ車が2台止まっているから宿泊者のものだろうと希望が湧く。奥さんに予約している旨を告げる。玄関には靴が幾つか並んでおり、入り口の部屋に先客がいることに少しほっとする。庭に面した廊下の一番奥の部屋に通されるが、外観から想像されたとおりの部屋。昨日、まるか旅館のことを、柳屋に比べ古いと思ったが、スウィートルームのようにも思える。先客二人は仲間のようで、今日の行程、明日の行程を話し合っているようだ。風呂に行く。脱衣所は足をどこにおいていいか分からない。恐る恐るドアを開けて浴室に入ると、部屋ほどではなかったが、何年も洗っていないような石鹸箱など、何かと気になってしまう。恐らく嫁さんなら、風呂には入らなかっただろうし、泊まることなどできないかもしれない。それから、洗濯をし、部屋で一服すると落ち着いてきた。、考えてみれば、お金を払って泊まっているとは言え、1日の汗を流せる風呂に入れて、屋根のある部屋で布団に寝られるのだからありがたいことではないかと妙にお遍路的になってしまうから不思議だ。
　夕食まで時間があるので、すぐ前の浜に出てみた。砂浜が延々と続き、景色は抜群で、いいロケーションである。それから、部屋に戻り日記をつけていると、庭のRV車にサーフィンを積んで若者が出て行く。その後隣りの棟から若者が出てきてボードにワックスをかけたりしている。２階もドタバタと音がする。ここはサーファーも泊まる宿らしい。そうこうする内に食事の声。玄関の上がり間の食堂に行ってみると先客の二人。一人は昨日窪川町まで一緒に歩いた人だった。もう一人は前回仲良くなった人で、この宿で落ち合ったらしい。料理は、昨日のまるか旅館の倍の品数。ボリュームも満点。彼らも意外だったらしく、意外といい宿ではないかと言う。彼らは風呂上りにビールを飲んだらしいので、自分も早速ビールを注文。これからの行程など話をして、食事の終わった彼らは先に引き上げたが、お酒をもう一本いただき、おひつのご飯も平らげ部屋に戻る。日記の続きを書き、明日の行程を確認してみると40キロはある。ヒェーという感じ。早く寝よう。20:30就寝。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（歩行距離：３２．３ｋｍ）